11月29日 色暦 黒橡 (くろつるばみ)

11月29日の、色暦
黒橡(くろつるばみ) – Kurotsurubami
「深い森の記憶が、静かに息づいている。」
黒橡は、橡(つるばみ=くぬぎ)の実を砕いて煎じ、鉄媒染で染め上げた青みがかった黒色。
古代では庶民の衣服に使われていましたが、平安期以降は貴人の喪服にも用いられ、威厳と静寂を象徴する色として受け継がれてきました。
『万葉集』や『宇津保物語』にも登場する、歴史ある色です。
11月29日は、冬の森が静かに深まる頃。
落葉の下に眠る橡の実、冷たい空気に包まれた木々の影。
黒橡は、そんな森の記憶を映す色。
それは、WABISUKEが大切にする「沈黙の詩」「時間の層」に通じる深みでもあります A。
暮らしの中の黒橡
• 使い込まれた木箱の内側
• 墨染めの袴に残る気配
• 冬の森に差す影の濃さ
黒橡は、語られないものの中にある重みと静けさを教えてくれます。
それは、自己を確立する色でもあり、喪の美学を纏う色でもあります。
参考文献
• 『日本の伝統色』 紫紅社
• 黒橡 – 伝統色のいろは