STORIES

  • 静けさを編む ー WABISUKEと俳句のこころ

     静けさを編む:WABISUKEと俳句のこころ 季節が移ろうたびに、空気の粒子が変わる。風の匂い、光の角度、足元の影の濃さ——それらすべてが、言葉になる前の感覚として私たちの内側に沈殿していきます。 WABISUKEが大切にしているのは、そうした「言葉になる前の美しさ」。その感覚を最も繊細...
  • 旅人のまなざし ー 松尾芭蕉とWABISUKEの詩学

      旅人のまなざし──松尾芭蕉と、静けさのかたち ある春の日、京都の町家の梁に、煤けた襖の裏紙がひらりと剥がれ落ちた。そこに記されていたのは、かすれた墨文字の走り書き。誰かの手による、季節のことばだった。 「黄昏の 雨にまぎるる 花の声」 その瞬間、私たちは思った。色や言葉は、記録ではなく記...
  • 俗を離れて、俗を用いる ー 与謝蕪村とWABISUKEのまなざし

    「俗を離れて、俗を用いる」——与謝蕪村とWABISUKEのまなざし 春の堤に立ち止まり、遠く家路を見つめる。その一瞬に、風は詩となり、日常は絵画となる。与謝蕪村は、そんな瞬間を生きた人でした。 江戸中期の俳人・画家である蕪村は、「俗を離れて、俗を用いる」という言葉を遺しました。それは、日常...
  • 余白に咲く意匠 ー 尾形光琳とWABISUKEの美学

      余白に咲く意匠 — 尾形光琳とWABISUKEの美学 静けさの中に、意匠は咲く。尾形光琳が描いたのは、ただの花ではない。それは、時を超えて揺らぐ「美の余白」だった。 江戸中期、京都の裕福な呉服商「雁金屋」に生まれた尾形光琳は、幼少期から染織や工芸に囲まれて育ちました。父・尾形宗柏は町人...
  • 静けさのなかに、宇宙を彫る ー 本阿弥光悦とWABISUKEの精神

      静けさの中に、宇宙を彫る — 本阿弥光悦とWABISUKEの精神 鷹峯の朝は、墨を流したような霧に包まれていたという。その静けさの中で、本阿弥光悦は筆をとり、漆を塗り、土を捏ねた。彼が築いた「光悦村」は、ただの芸術家の集落ではない。それは、思想と美が交差する、ひとつの宇宙だった。 江戸初...
  • 用の美 ー 柳宗悦が見つけた名もなき手仕事の輝き

    「用の美」──柳宗悦が見つけた、名もなき手仕事の輝き 美とは、誰かの名声によって生まれるものではない。それは、日々の暮らしの中で、静かに、無心に、育まれていくもの。柳宗悦が見出したのは、そんな「名もなき美」の力でした。  無名の工人──ヒーローなき芸術 柳宗悦は、1920年代の日本で「民...
  • 秘すれば花 ー 世阿弥に学ぶ、見えない美の力

    「秘すれば花」──世阿弥に学ぶ、見えない美の力 静けさの中に、最も深い美がある。それを教えてくれたのが、室町時代の能楽師・世阿弥でした。 彼が遺した『風の姿花伝』は、ただの芸術論ではありません。それは「生き方の書」であり、「美の哲学書」であり、そして何より、「見えないものを感じる力」を育て...
  • 日本の色には物語がある

    日本の色には物語がある ―侘び助が紡ぐ、色と記憶の対話― 色は、語る。言葉よりも静かに、しかし確かに。日本の伝統色には、そんな「語り掛ける力」がある。 例えば「海松色(みるいろ)」は、海藻の深い緑。それは、海辺の暮らしと、命の循環を思わせる色。「黄朽葉(きくちば)」は、朽ちゆく葉の黄。それは...
  • 色に宿る記憶  WABISUKEが見つめる日本の伝統色

    色に宿る記憶:WABISUKEが見つめる日本の伝統色 色には、音がある。色には、香りがある。そして色には、記憶がある。 日本の伝統色は、自然と季節、そして人の心の揺らぎを映す鏡だ。「紅梅色」は春の気配を運び、「青鈍」は雨の静けさを語る。「黄朽葉」は枯れゆく葉の美しさを讃え、「藍白」は雪の余...
  • WABISUKEと色:伝統と越境のあいだで

    WABISUKEと色:伝統と越境のあいだで 色とは、文化の記憶であり、感情の余韻であり、時に思想そのものだ。WABISUKEが紡ぐ色彩は、単なる装飾ではない。それは、時代や国境を越えて響き合う「問い」なのだ。 たとえばこの〈立涌〉のがま口。文様は平安の雅を宿しながら、色は北欧の静謐を纏って...
  • ポケットの中の京都

    ポケットの中の京都 旅に出なくても、特別な体験がなくても——ふとした瞬間に、心の奥で「京都」がそっと息づくことがあります。 たとえば、小さながま口を開いたとき。そこに広がる色と柄に、和の空気をまとった自分を見つける。それは、手のひらに宿る小さな記憶。忙しさの合間に、静かに思い出される“京都の...
  • 素材の声を聴く  帆布という" 耐える美"

    素材の声を聴く——帆布という耐える美 帆布(はんぷ)という素材に、あなたはどんな印象を抱くだろうか。分厚く、ざらりとした手触り。素朴で、どこか懐かしい風合い。トートバッグやエプロン、テントや船の帆など、日常と冒険のあいだを行き来するこの布には、静かに語りかけてくるような力強さがある。 帆...