静けさを編む ー WABISUKEと俳句のこころ


 静けさを編む:WABISUKEと俳句のこころ

季節が移ろうたびに、空気の粒子が変わる。風の匂い、光の角度、足元の影の濃さ——それらすべてが、言葉になる前の感覚として私たちの内側に沈殿していきます。

WABISUKEが大切にしているのは、そうした「言葉になる前の美しさ」。その感覚を最も繊細に掬い上げる表現のひとつが、俳句です。

古池や 蛙飛びこむ 水の音
——松尾芭蕉

この一句にあるのは、ただの風景ではありません。沈黙の中に響く一瞬の音。その音が、時間の流れを切り裂き、私たちの心に「今」を刻みます。

WABISUKEのものづくりも、俳句と同じように「余白」を重んじます。色も形も、語りすぎず、ただそこにあることで、見る人の記憶や感情を呼び起こす。俳句が季語を通して季節を感じさせるように、私たちのプロダクトも、素材や色彩を通して時間の気配を伝えたいのです。

 俳句とプロダクトの対話

たとえば、「深紅(しんく)」という色。これは単なる赤ではなく、紅葉が散る直前の、少し翳りを帯びた赤。そこには「終わりの美しさ」が宿っています。

紅葉散る 音なき風に 身をまかす

この一句は、WABISUKEの布地が風に揺れる様子を思わせます。動きの中にある静けさ。それは、俳句が教えてくれる「見えないものを見る力」なのかもしれません。

 俳句を書くように、ものをつくる

私たちは、言葉を選ぶように糸を選びます。語尾の響きを整えるように、縫い目の角度を調整します。俳句が「五・七・五」という制約の中で無限の世界を描くように、限られた素材と形の中で、無限の感情を紡ぎたい。

WABISUKEのプロダクトは、俳句のように「読む」のではなく「感じる」もの。手に取ったとき、ふと一句が浮かぶような、そんな体験を届けられたら——それが私たちの願いです。