静寂の庭に、風が語るー修学院離宮にて

静寂の庭に、風が語る——修学院離宮にて
京都の北東、比叡山のふもとに広がる修学院離宮。
ここには、時の流れを忘れさせるような静けさがあります。
江戸初期、後水尾上皇が偶然たこの離宮は、三つの庭——下離宮・中離宮・上離宮——が山の斜面に沿って連なり、まるで自然と対話するように設計されています。
歩き始めは、寿月観のある下離宮から。
数寄屋造の建物の襖には、月が描かれていました。その
月は、誰かの記憶の中に広がるような、淡く、儚い光。
障子越しに差し込む光と、庭の苔の緑が溶け合い、まるで夢の中にいるようでした。
中離宮では、楽只軒の赤い壁が印象的でした。
ベンガラ色の建物は、山に緑に包まれながらも、凛とした存在感を放っています
。
そして、最後にたどり着くのが上離宮。
隣の雲亭に腰掛けて、眼下に広がる浴龍池と、遠くに霞む京都の街並み。
晴れた日には、大阪のあべのハルカスまで見えるというこの場所は、「雲の隣」にある展望台。
池の中島、万松塢には紅葉がこんもりと盛られ、まるで季節らしさが見え見えでした。
修学院離宮は、借景の美を超えて、風景独特が庭となる場所。
ここでは、風が語り、光が踊り、沈黙が詩になる。
WABISUKEが大切にする「余白の美」「静けさの哲学」が、この庭に息づいているようでした。
季節が変わるたびに、また訪れた場所。
春の霞、夏の緑陰、秋の紅葉、冬の雪景色——その
すべてが、心の奥に静かに響く、ひとつの詩となるのです。