泥棒柄じゃ、もったいない。 唐草模様の本当の話

泥棒柄じゃ、もったいない。唐草模様のほんとうの話
緑の苔の上に、そっと置かれたがま口。金具の口金が陽の光を受けてきらりと光り、布地には白く流れるような唐草模様。まるで風が描いた蔓草の軌跡のように、くるくると優雅に舞っています。
このがま口は、WABISUKEの唐草模様シリーズのひとつ。けれど、「唐草模様」と聞いて「泥棒の柄じゃない?」と首をかしげる人も少なくありません。昭和の漫画やドラマで、泥棒が唐草模様の風呂敷を背負って逃げる姿が定番だったからです。
でも、それって本当の姿じゃないんです。
昭和の演出が生んだ「泥棒柄」のイメージ
昭和の時代、特に戦後の漫画やテレビでは、泥棒といえば黒装束に唐草模様の風呂敷。盗んだものを包んで、夜の路地裏を「こそこそ」と逃げる。そんな描写が繰り返されるうちに、「唐草模様=泥棒」というイメージが定着してしまいました。
でも、よく考えてみてください。泥棒がわざわざ目立つ模様の風呂敷を使うでしょうか? 実は、唐草模様は庶民の生活に深く根ざした、縁起の良い文様だったのです。
唐草模様のルーツは、祝福と繁栄
唐草模様は、蔓草が四方八方に伸びていく様子を図案化したもの。蔓は切っても切っても伸びる、生命力の象徴です。
だからこそ、唐草模様は「繁栄」「長寿」「家系が途切れない」などの意味を持ち、古くから婚礼や贈答の場で使われてきました。
特に、花嫁が嫁入り道具を包む風呂敷には、唐草模様がよく使われました。嫁ぎ先で使う道具を、実家の風呂敷で包んで持っていく。そして、時が経ち、実家に戻るときも同じ風呂敷で荷物を包む。唐草模様は、家族の絆を包む布だったのです。
泥棒が使ったのは「家にあった風呂敷」
では、なぜ泥棒が唐草模様の風呂敷を使っていたのでしょうか?
実は、盗みに入った家にあった風呂敷を使って荷物を包んだだけ。つまり、唐草模様の風呂敷が多くの家庭にあった証拠でもあります。
庶民の生活に根ざした模様だからこそ、どの家にも一枚はあった。それが、泥棒の逃走シーンに登場することになり、いつしか「泥棒柄」と呼ばれるようになったのです。
でも、それは唐草模様にとって、ちょっとした濡れ衣。
WABISUKEのがま口に込めた思い
WABISUKEでは、この唐草模様のがま口に、そんな誤解をほどきたいという思いを込めています。
がま口は、口が大きく開くことから「運を呼び込む」「福を逃さない」とも言われる縁起物。そして唐草模様は、繁栄と絆の象徴。
つまりこのがま口は、「福を呼び込み、絆を包む」アイテムなのです。
苔の上に置かれたがま口は、まるで自然と共鳴するように静かに佇みます。蔓草の模様が風に揺れるように、持つ人の人生にも、しなやかな流れと繋がりが生まれますように。
唐草模様を、もう一度見直してみませんか?
「泥棒柄」なんて言わせない。唐草模様は、家族の歴史を包み、祝福を運び、未来へと繋がる模様です。
昭和の演出に笑いながら、でもその奥にある本当の意味に気づいたとき、唐草模様はきっと、もっと美しく見えるはず。
WABISUKEのがま口を手にしたとき、あなたの手のひらには、そんな物語がそっと宿るのです。