11月8日 色暦 鉛色 (なまりいろ)


11月8日の、色暦 鉛色(なまりいろ)

「空が重たくなると、心は静かになる。」

今日の空は、鉛色。曇天の広がる空は、まるで季節の深呼吸のように、静かに、重たく、そして穏やかに降りてくる。

鉛色(なまりいろ)は、金属の鉛に由来する、灰色に少し青みを帯びた鈍い色。光を吸い込むような質感があり、晴れやかさとは対照的に、内省的な時間を誘う色でもある。

この色には、動かない時間がある。雨が降るわけでもなく、雪が舞うわけでもない。ただ、空が沈黙する。そんな日には、外に出るよりも、部屋の中で静かに本を開いたり、手紙を書いたりするのが似合う。

鉛色は、侘び寂の美学にも通じる。華やかさを求めない、けれど確かに存在する。曇り空の下で見つける静かな美しさは、心の奥にそっと残る。


参考文献

• 『日本の伝統色』紫紅社
• 『和の色手帖』草木染研究会編
• 「鉛色(なまりいろ)」— irocore.com
• 『四季の色名事典』講談社