11月20日 色暦 紅消鼠 (べにけしねず)


 11月20日の、色暦

紅消鼠(べにけしねず)

「紅を消したその先に、語られない想いがにじむ。」

紅消鼠は、紅色の上に墨や黒を重ねたような、灰みがかった赤紫色。江戸後期に流行した「四十八茶百鼠」のひとつで、粋と安心の美学を映す色です。色名の「消」「鼠」は、どちらも“味を感じない”ことを示し、華やかな紅を沈めることで、感情の残り韻や静けさを表現しています。

この色は、紅の情熱を一度沈めたあとに残る、静かな熱。恋の終わり、祭りのあと、手紙を書いた夜——そんな「語られない想い」の色です。江戸の町人たちは、奢侈禁止令の中で許された鼠色の範囲で、粋を競い合いました。紅消鼠はその中でも、特に「内に秘める美」を象徴する色でした。

11月20日は、霜月の終盤に差しかかる頃。紅葉が褪せ、空気が白み、街が静かに沈んでいく。紅消鼠は、そんな季節の「余韻」を映す色。華やぎのあとに残る、静かな情緒です。

WABISUKEの哲学においても、「語られないもの」への敬意は重要なテーマ。紅消鼠は、語らずとも伝わる色。空間に深みを与え、記憶の奥にそっと残る色です。

 

 参考文献

• 『日本の伝統色』紫紅社
• 紅消鼠とは? – 伝統色のいろは
• 『手鑑模様節用』江戸染色技法書

 

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