鬼の首を切った刀ー『鬼切丸』と酒呑童子伝説

鬼の首を切った刀──『鬼切丸』と酒呑童子伝説
京都・大江山に潜む鬼の首領「酒呑童子(しゅてんどうじ)」──その名は、今も人々の記憶に妖しく残っています。そして、その鬼の首を切り落とされる刀が「鬼切丸(おにきりまる)」です。
酒呑童子とは?
平安時代、都を荒らす鬼たちの頭領として恐れられた酒呑童子。 彼は大江山に住み、美女をさらい、酒を好み、夜な夜な宴を開いていたといいます。 その姿は赤鬼とも白鬼ともあり、異形でありながらどこか人間的な哀しみも感じさせます。
源頼光と四天王の討伐
朝廷の命を受けた将軍・源頼光(みなもとのらいこう)は、坂田金時(=金太郎)ら四天王を率いて酒呑童子討伐に向かいます。策略として、鬼たちに毒酒を飲ませ、酔わせたところを襲撃。酒呑童子の首を切り落としたのが、伝説の刀「鬼切丸」だと言われています。
この刀は、伯耆国の名工・安綱(やすつな)によって鍛えられたと、源氏の家宝として代々受け継がれました。 現在は兵庫県川西市の多田神社に所蔵されており、清和源氏の武勇の象徴として崇められています。
刀に宿のもの
鬼切丸はただの武器ではありません。人の恐怖、怒り、祈り、そして「正義とは何か」という挑戦を宿したのです。鬼を斬るという行為は、外敵を排除するだけでなく、内なる闇を断ち切る訴訟でもあったのかもしれません。
ただ、彼の伝説が今も語り継がれていること自体が、人々の心に何かを残した証なのです。