11月17日 色暦 黒鳶 (くろとび)

11月17日の、色暦
黒鳶(くろとび)
「沈黙の中に、熱を秘める色。」
黒鳶(くろとび)は、鳶色(赤褐色)をさらに暗くした色。江戸時代前期から染め色として用いられ、小袖や帯などに粋な装いとして流行しました 。赤みを帯びた黒は、ただの地味ではなく、内に秘めた情熱や品格を感じさせる色です。
11月17日は、霜月の深まりとともに、空気が冷たく澄み、街の色が静かに沈んでいく頃。黒鳶は、そんな季節の背景に溶け込みながらも、確かな存在感を放ちます。落ち葉の赤茶、夕暮れの影、炭火の残り香——それらに共鳴する色です。
この色には、江戸の美意識が宿っています。派手さを避け、粋を重んじる。見せるよりも、滲ませる。黒鳶は、そうした「見えない美」を体現する色。侘び寂びの感覚にも通じる、沈黙の中の熱です。
WABISUKEの哲学においても、「控えめな強さ」は重要なテーマ。黒鳶は、語らずとも伝わる色。空間に深みを与え、物語の余白を引き締める力を持っています。
参考文献
• 黒鳶(くろとび)とは? – 伝統色のいろは
• 『日本の色辞典』紫紅社
• 『和の色事典』視覚デザイン研究所