11月21日 色暦  黒紅 (くろべに)


 11月21日の、色暦

黒紅(くろべに)

「語られぬ紅が、静けさの奥で燃えている。」

黒紅(くろべに)は、黒に近い深い紅色。紅の情熱を内に秘め、静けさと気品を併せ持つ色です。表には出さず、裏地や襦袢に忍ばせる——そんな江戸の粋を象徴する色でもあります。

この色は、華やかさを抑えた「内なる紅」。恋文を出せなかった夜、茶室の炉に灯る火、あるいは紅葉が褪せたあとの山の静けさ。黒紅は、そうした「語られない想い」や「終わりの余韻」を映す色です。

11月21日は、炉開きの頃。茶室に初めて火が入る日でもあり、冬の始まりを告げる節目。黒紅は、その火のように、静かに、しかし確かに心を温める色。外の寒さと内のぬくもり、その対比が際立つ季節にふさわしい一日です。

WABISUKEの哲学においても、「語られないもの」や「内に秘める熱」は重要なテーマ。黒紅は、まさにその象徴。空間に深みを与え、言葉にしない感情をそっと伝える色です。


 参考文献

• 『日本の伝統色』紫紅社
• 『和の色手帖』草木染研究会編
• 黒紅 – 伝統色のいろは
• 『江戸の色彩文化』吉川弘文館