森に佇むもの  ニホンカモシカの静かな詩


森に佇むもの ― ニホンカモシカの静かな詩

霧深き山の朝、岩肌に溶け込むように立っている影。 その
瞳は、何百年も前からこの森を見つめてきた静みたいけさを湛えている。
ニホンカモシカ――日本列島にのみ生きる、孤高の草食獣。
その姿は、まるで山の精霊のように、時の流れに寄り添っている。

日本にしかいない、ウシ科の静かな住人

ニホンカモシカ(Capricornis Chrisus)は、ウシ科カモシカ属に属する日本固有種。
本州・四国・九州の山地に生息し、樹林の斜面や岩場を好んで暮らす。その
体は黒から灰色、季節によって毛色が変化し、冬にはふさふさとした毛並みが雪に映える。

角は短い後ろに湾曲し、雌雄と一緒にいるが、見分けは難しい。
その姿は「鹿」の名前を持ちながら、実はウシヤギに近い存在

幻の動物から、文化の象徴へ

明治から昭和初期にかけて、毛皮や肉、角を目的とした狩猟により、ニホンカモシカは激減。
「幻の動物」と呼ばれるほど姿を消し、山奥にひっそりと生き延びていた。

1934年、国の天然記念物に指定。
1955年には「特別天然記念物」となり、狩猟が全面禁止され、保護が進められた。
その後、個体数は回復し、今では山の麓でもその姿を見ることができるようになった。

富山県では県獣として親しまれ、地域の博物館や動物園でも飼育されています。その
存在は、自然と人との共生を考えるとして、静かに語りかけてきます。

WABISUKEの視点で ― 詩と命の交差点

ニホンカモシカは、華やかさではなく、静けさの美を教えてくれる。その
佇まいは、季節の移ろいを映す鏡のようなもの

WABISUKEでは、この静かな命を「森の詩」として紹介したいと思います。

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