11月12日 色暦 黄櫨染 (こうろぜん)

11月12日の、色暦
黄櫨染(こうろぜん)
「深まる秋に、静かな威厳を纏う。」
黄櫨染(こうろぜん)は、櫨(はぜ)の木の樹皮や実から得られる染料で染めた、赤みを帯びた深い黄褐色。古来、天皇の礼服にのみ許された色であり、禁色(きんじき)のひとつとして知られています。
この色には、ただの格式ではなく、自然とともに生きる日本人の美意識が宿っています。櫨の実が熟す晩秋、山の奥で静かに染められる布。その深みは、時間と手間、そして祈りのような所作の積み重ねによって生まれます。
11月12日は、霜月の中ほど。紅葉が最も深く色づき、空気が澄みきる頃。そんな日に、黄櫨染のような色を身につけると、自然と背筋が伸びるような感覚があります。派手ではないけれど、確かな存在感。静けさの中に、揺るぎない芯がある色です。
この色は、WABISUKEの哲学にも通じます。華美を避け、深みを尊ぶ。時を重ねたものにこそ、真の美が宿るということを、黄櫨染は教えてくれます。
参考文献
• 『日本の伝統色』紫紅社
• 『禁色の美学』岩波書店
• 「黄櫨染(こうろぜん)」— 伝統色彩文化研究会
• 『色彩の日本史』吉川弘文館