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by kataokatetsuya
茶杓の孤独──誰にも語られない竹の記憶
茶杓というのは、奇妙な道具だ。細くて、軽くて、言葉を持たない。でも、茶の湯の中では、確かにその存在が必要とされている。
僕はときどき、茶杓のことを考える。それは、誰にも気づかれずに茶入から抹茶をすくい、茶碗の縁にそっと置かれるだけの存在。音もなく、主張...
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by kataokatetsuya
水の音。──静けさを揺らす、やさしい波紋
「ぽたん…」「さらさら…」「とぷん…」水の音は、静けさの中にある動き。それは、茶室の空気をわずかに揺らし、心の奥に波紋を広げる。
湯を汲む──始まりの音
茶の湯の準備は、水を汲む所作から始まる。水指の蓋を開けると、ひんやりとした空気が立ちのぼる。柄...
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by kataokatetsuya
茶杓と月の距離
夜の茶室には、昼とは違う種類の静けさがある。 それは、眩しい静けさではなく、延々と眠っている静けさだ。
茶杓を手に取れる。細くて、軽くて、どこか当てにならない。でも、その頼りなさが、逆に安心感を与えてくれる。
茶杓には名前がある。「夢の浮橋」とか、「時雨の音」とか、そういう...
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by kataokatetsuya
午後三時の抹茶と、世界の静かな裂け目について
午後三時、僕は茶室にいた。正確に言えば、茶室のような場所にいた。畳の匂いがして、障子から差し込む光がやけに柔らかくて、そこには時間の流れが、少しだけ違う速度で進んでいるような気がした。
茶の湯というのは、奇妙な儀式だ。湯を沸かして、茶...
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