橋姫と『丑の刻参り』ー嫉妬と祈りが鬼になるまで

橋姫と『丑の刻参り』──嫉妬と祈りが鬼になるまで
京都・宇治川にかかる宇治橋。そのたもとにひっそりと祀られている「橋姫神社」は、ある女性の深い感情の記憶を今も静かに抱えています。
鬼になるための祈り
平安時代、ある貴族の娘が恋の嫉妬に悩まされ、貴船神社に七日間並んでこう好評です。
「貴船大明神よ、私を鬼に変えてください。殺したい女がいるのです。」
その願いに、神はこう対応しました。
「鬼になった方が、姿を変えて、宇治川に二十一日間浸かりなさい。」
娘は髪を五つに分けて角に見立て、顔に朱、体に丹を塗り、鉄輪を逆さに頭に乗せ、松明を灯して夜道を走りました。
この姿こそが、後に「丑の刻参り」の原型となったのです。
丑の刻参りとは
丑三つ時(午前2時頃)、白装束に鉄輪をかぶり、藁人形に五寸釘を打ち付ける──そんな呪術のイメージは、橋姫の荒行から生まれました。
橋姫のもうひとつの顔
橋姫は「嫉妬深い鬼女」として語られることもある、宇治橋を守る神でもあります。 橋を渡る婚礼の列が彼女の前を通ると、嫉妬される縁が切れるという迷信もあるほど。
その想いが、時に人を鬼に変えてしまうほどに深かった──そんな物語が、宇治の風に今も残っています。