STORIES

  • 泥棒柄じゃ、もったいない。  唐草模様の本当の話

      泥棒柄じゃ、もったいない。唐草模様のほんとうの話 緑の苔の上に、そっと置かれたがま口。金具の口金が陽の光を受けてきらりと光り、布地には白く流れるような唐草模様。まるで風が描いた蔓草の軌跡のように、くるくると優雅に舞っています。 このがま口は、WABISUKEの唐草模様シリーズのひとつ。け...
  • 立涌 (たてわく) という、静かに昇る美しさ

      立涌(たてわく)という、静かに昇る美しさ WABISUKEのがま口とポシェットに宿る、波のような記憶 石畳の上にそっと置かれたがま口ポシェット。その隣には、手のひらに収まるがま口。どちらも、深い藍と黒を基調に、白と青の曲線が波のように連なる立涌(たてわく)柄で仕立てられています。写真に映...
  • 忍者とは何者か?  霧の中から現れた日本の影の戦士たち

      忍者とは何者か? 霧の中から現れた日本の影の戦士たち はじめに:世界が憧れる「NINJA」の正体 「忍者」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。黒装束に身を包み、手裏剣を操り、煙玉で姿を消す…。そんなイメージが世界中に広がっています。しかし、実際の忍者はそのような派手な存在では...
  • スマートフォンと銀閣寺、あるいは記憶の余白について

    スマートフォンと銀閣寺、あるいは記憶の余白について 最近、京都に行くときは、なるべくスマートフォンを見ないようにしている。もちろん、地図アプリは便利だし、カフェの場所を調べるのにも役立つ。でも、あまりにも便利すぎて、気がつくと目の前の風景が、どこか遠くのスクリーンの中にあるような気がして...
  • 11月24日 色暦  芭蕉色 (ばしょういろ)

    11月24日の、色暦 芭蕉色(ばしょういろ) 「冬の手前に、南の風が通りすぎる。」 芭蕉色は、芭蕉の若葉のような、やや黄みがかった淡い緑色。その名の通り、芭蕉(バショウ)の葉の色に由来します。芭蕉はバナナに似た植物で、沖縄や九州など温暖な地域に育ち、古くは繊維としても使われてきました。 1...
  • 銭湯のタイルと音 湯気の向こうにあった風景

      銭湯のタイルと音|湯気の向こうにあった風景 はじめに:音で記憶する場所 銭湯には、音がある。桶を置く音、湯が注がれる音、足音、笑い声、そして静寂。それらはすべて、湯気の向こうに溶けていく。視覚よりも先に、耳がその空間を覚えている。そして、タイルがその音を受け止めていた。 昭和の銭湯は、...
  • 11月23日 色暦 深緋 (こきひ)

    11月23日の、色暦 深緋(こきひ) 「働く手に、静かな誇りが灯る。」 深緋は、茜と紫草を重ねて染めることで生まれる、紫みを帯びた暗い赤色。10世紀の法典『延喜式』では、紫に次ぐ高位の朝服の色とされ、格式と敬意を象徴する色でした。その深みは、華やかさではなく、内に秘めた力を語ります。 11...
  • ちゃぶ台の記憶 低さがつなぐ、かぞくのまなざし

    ちゃぶ台の記憶|低さがつなぐ、家族のまなざし はじめに:ちゃぶ台という風景 昭和の家には、ちゃぶ台がありました。 畳の上にぽつんと置かれた、丸い木の台。脚は短く、天板には温もりを感じさせる木目が浮かんでいます。決して豪華なものではありませんが、その存在は家の中心であり、家族の時間の中心でも...
  • 11月22日 色暦  灰白 (かいはく)

    11月22日の、色暦 灰白(かいはく) 「白さの中に、静けさが宿る。」 灰白は、白にほんの少し灰を混ぜたような淡いグレー。純白よりも柔らかく、銀鼠よりも明るい。空気が白くなる頃、霜が降り、吐息が見えるようになる季節にふさわしい色です。 この色は、冬の始まりを告げる「小雪(しょうせつ)」の頃...
  • 『美しい』と『かわいい』 日本語に宿る二つの美意識

      「美しい」と「かわいい」──日本語に宿る二つの美意識 はじめに:言葉に宿る感性 日本語には、感情や印象を繊細に表現する語彙が豊富に存在します。その中でも「美しい」と「かわいい」は、日常的に使われながらも、実は深く異なる美意識を内包しています。どちらも肯定的な評価を表す言葉ですが、その語感...
  • 11月21日 色暦  黒紅 (くろべに)

     11月21日の、色暦 黒紅(くろべに) 「語られぬ紅が、静けさの奥で燃えている。」 黒紅(くろべに)は、黒に近い深い紅色。紅の情熱を内に秘め、静けさと気品を併せ持つ色です。表には出さず、裏地や襦袢に忍ばせる——そんな江戸の粋を象徴する色でもあります。 この色は、華やかさを抑えた「内なる紅...
  • 『民藝』と『工芸』の違いとは

      「民藝」と「工芸」の違いとは 美しさの根源を問い直す、日本の手仕事文化の二つの道 はじめに:似て非なる言葉、「民藝」と「工芸」 「民藝(みんげい)」と「工芸(こうげい)」は、どちらも日本の手仕事文化を語るうえで欠かせない言葉です。陶器、染織、木工、漆器など、手でつくられた美しい品々を...