手のひらサイズの祈り

手のひらサイズの祈り──カメ柄がま口に込めた記憶と願い
苔むした地面にそっと置かれた、赤いがま口。
その布地には、愛らしいカメたちが並んでいる。白い輪郭に、六角形の甲羅。どこか懐かしく、どこか守られているような気がする。
このがま口は、京都のブランド「WABISUKE」が手がけたもの。伝統と遊び心を融合させたデザインの中に、私たちが忘れかけていた“祈り”が宿っている。
カメは、日本の文化において「長寿」や「吉兆」の象徴。
けれどこのがま口に描かれたカメたちは、ただ縁起物として存在しているわけではない。彼らは、記憶の守り人なのだ。
祖母の笑顔。
大切な人の健康。
旅先で拾った小さな石。
失くしたと思っていた手紙の一節。
そんな“かけがえのないもの”を、私たちはどこにしまっているのだろう。スマホのメモ帳?クラウドの奥?それとも、心の片隅?
WABISUKEのがま口は、そうした記憶や願いを「手のひらサイズ」にして、日常の中にそっと差し込んでくれる。
ポケットに入れて持ち歩ける祈り。
バッグの中で静かに息づく記憶。
この赤い布地に描かれたカメたちは、まるで「時を超えて価値を守る存在」のようだ。通貨も、記憶も、祈りも──すべては“信じる力”によって形を保っている。
がま口を開けるたび、私は思い出す。
祖母がくれた言葉。
「美しいものは、誰かの祈りだよ。」
このがま口は、ただの小物入れではない。
それは、誰かの祈りをそっと包み込む器。
そして、私たち自身が「何を大切にしているか」を問い直す鏡でもある。
あなたなら、何をこのカメに詰めて持ち歩きますか?