11月3日 色暦 朽葉色(くちばいろ)


 11月3日 色暦 朽葉色(くちばいろ)

「色は、枯れてなお語る。」

文化の日。晴れ渡る空の下、街は祝祭の気配に包まれながらも、足元には静かに朽ちてゆく葉が広がっている。今日の色は「朽葉色」。枯れ葉の茶褐色に、秋の終わりと冬の気配が滲む。

朽葉色は、かつて鮮やかだった紅葉が、命を燃やし尽くしたあとの静かな余韻。色彩の終焉ではなく、記憶の始まり。枯れゆく葉の一枚一枚に、季節の物語が染み込んでいる。

この色には、侘びと寂の美学が宿る。華やかさを手放したあとの、静けさの中にある豊かさ。朽葉色の布を纏えば、自然と背筋が伸びる。過ぎ去った季節を悼むのではなく、受け入れる姿勢がそこにある。

文化の日にこの色を選んだのは、偶然ではない。文化とは、積み重ねられた記憶と、朽ちてもなお残る思想の層。朽葉色は、そんな文化の深層を映す色でもある。

今日、もし一枚の葉を拾うなら、それはただの枯れ葉ではない。あなたの中にある、何か大切なものの記憶かもしれない。


参考文献

• 『日本の伝統色』紫紅社
• 「朽葉色(くちばいろ)」— irocore.com(https://irocore.com/kuchibairo/)
• 『四季の色名事典』講談社
• 『和の色手帖』草木染研究会編