STORIES

  • 茶杓の孤独  誰にも語られない竹の記憶

    茶杓の孤独──誰にも語られない竹の記憶 茶杓というのは、奇妙な道具だ。細くて、軽くて、言葉を持たない。でも、茶の湯の中では、確かにその存在が必要とされている。 僕はときどき、茶杓のことを考える。それは、誰にも気づかれずに茶入から抹茶をすくい、茶碗の縁にそっと置かれるだけの存在。音もなく、主張...
  • 茶杓と月の距離

    茶杓と月の距離 夜の茶室には、昼とは違う種類の静けさがある。 それは、眩しい静けさではなく、延々と眠っている静けさだ。 茶杓を手に取れる。細くて、軽くて、どこか当てにならない。でも、その頼りなさが、逆に安心感を与えてくれる。 茶杓には名前がある。「夢の浮橋」とか、「時雨の音」とか、そういう...