11月19日 色暦 薄墨色 (うすずみいろ)

11月19日の、色暦
薄墨色(うすずみいろ)
「曖昧さの中に、記憶がにじむ。」
薄墨色は、墨を水で薄めたような淡い灰色。墨絵の余白、和紙に滲む筆跡、冬の空に広がる曇りの色——そのすべてに通じる、静けさと曖昧さを宿した色です。
与謝野晶子はこの色に、一面の雪景色を重ねて詠みました。色のない風、音のない街、枯葉の舞う登山道。薄墨色は、そうした「色なき風景」を映す色。侘び寂びの「寂」の中でも、特に「滲み」と「余白」に寄り添う存在です。
11月19日は、霜月の後半。紅葉が終わり、空気が白くなり始める頃。人の気配も静まり、記憶の中の秋がゆっくりと遠ざかっていく。薄墨色は、そんな季節の「終わりの予感」を映す色です。
WABISUKEの哲学においても、「曖昧さの美」は重要なテーマ。はっきりしないからこそ、想像が広がる。語らないからこそ、余韻が残る。薄墨色は、詩的な空間をつくる色。静かに、深く、心に染み入る色です。
参考文献
• 『日本の伝統色』紫紅社
• 『和の色手帖』草木染研究会編
• 薄墨色 – 伝統色のいろは
• 暦生活:薄墨色の文化的背景