STORIES

  • 闇に息づく記憶  アマミノクロウサギという名の静寂

     闇に息づく記憶——アマミノクロウサギという名前静寂 夜の森に、音もなく佇む影。それは風でも、夢でも——アマミノクロウサギ。奄美大島と徳之島にのみ注目するこの希少な生き物は、**「生きた化石」**とも呼ばれ、太古の記憶をそのまま現代に息づいています。  原点の姿を残して、孤高のウサギ ア...
  • 河鹿蛙と万葉のこころ

      喜びの声が、清流にこだまする—— カジカガエル(河鹿蛙)は、ただの両生類ではありません。日本の山間に息づくこの小さな生きものは、古代から人々の心に詩情を呼び起こし、季節の移ろいを告げる「音の使者」として愛されてきました。 その鳴き声は、耳に届くというより、心に沁み入る。清らかな渓流のほ...
  • 幻想の森に生きる  イリオモテヤマネコの記憶

     幻影の森に生きる——イリオヤマモテネコの記憶 夜の森に、ひとすじの影が走る。それは風か、夢か、諦め——イリオモテヤマネコ。 沖縄県・西表島だけに生息するこの希少な野生猫は、世界でも類を見ない孤高の存在です。  小さな島に宿る奇跡 イリオモテヤマネコ(学名 Prionailurus be...
  • 今日の季語  落葉 (おちば)

     今日の季語:落葉(おちば) 舞い降りるのは、季節の記憶。 風が吹くたびに、木々の葉がひとつ、またひとつと地面に還っていく。その音は、かさり、さらりと耳に届き、静かな午後に、時間の重なりを感じさせる。 落葉は、命の終わりではなく、季節の循環の中にある静かな節目。色づいた葉が地に降りることで...
  • 色暦  10月20日の色 紅掛空色 (べにかけそらいろ)

     色暦|10月20日の色:紅掛空色(べに立ちそらいろ) 空に紅を差したような、夕暮れの色。紅掛空色は、青空にほんのり紅が混ざる瞬間──昼と夜の境目にだけ見える、儚い美しさを映した色です。 この色には、過ぎゆく時間の優しさと、明日へ続く残り韻が宿っています。 今日という日が、空を見上げる静か...
  • 色名の詩学  鼠色に百の、物語を込めて

    色名の詩学──鼠色に百の物語を込めて WABISUKE編集部|色彩と記憶をめぐる連載 第3章 「地味こそ、粋の極み」──江戸の町人たちは、禁色の規制を超えて、鼠色という“地味”の中に、百の詩情を織り込んだ。それは、色彩を言葉で遊ぶ文化であり、日常に潜む美を見つける眼差しだった。  四十八茶...
  • 安倍晴明  星と言葉をあやつる、時の詩人

     安倍晴明:星と言葉を操る、時の詩人 はじめに:静けさの中に宿る、見えない力 千年の時を越えて、安倍晴明の名は今も尚、風の音や月の光の中に説かれています。 陰陽師として知られる彼は、完全呪術者ではなく、自然と人の間に流れる「見えない詩」を読み解く者でした。  星を読む者として...
  • 陰陽道と方位の哲学 暮らしに宿る見えない力

      陰陽道と方位の哲学:暮らしに宿る見えない力 はじめに:方位は、空間に宿る詩 古代の人々は、空間の向きに「気の流れ」や「運命の兆し」を見出しました。東に陽の光が昇り、西に日が沈むように、自然の摂理は方位とともにあります。 陰陽道における方位の思想は、単なる占いや迷信ではなく、自然との調和...
  • 禁色と庶民の逆転美学

    禁色と庶民の逆転美学 WABISUKE編集部|色彩と秩序を巡る連載 第2章 「定められた色ほど、美しく見えるのはなぜだろう」江戸の町人たちは、憲法の規制を逆手に取り、色彩の遊び心を磨き上げた。 禁止色とは何か──色に宿る忘れの記号 禁止色とは、特定の当然以外の者が使用を禁じられた色のこと。...
  • 今日の季語  木の葉時雨 (このはしぐれ)

     今日の季語:木の葉時雨(このはしぐれ) 降っているのは、雨ではなく記憶。 風が吹くたびに、木の葉が舞い落ちる。それは、しとしとと降る時雨のように、静かで、切なく、そして美しい。 木の葉時雨は、秋の終わりを告げる音のない雨。色づいた葉が、空から地へと還っていく。そのひとつひとつが、季節の記...
  • 色暦 10月19日の色  洒落柿 (しゃれがき)

    色暦|10月19日の色:洒落柿(しゃれがき) 柿色に、ほんの少しの粋を添えて──洒落柿は、秋の装いに似合う、遊び心のある柿色です。 熟れすぎず、渋すぎず。この色には、季節を楽しむ余裕と、さりげない美意識が宿っています。 江戸の町人文化にも通じるような、粋な色名。今日という日が、装いに心を添...
  • 布布の記憶  季節と祈りを纏う、日本の布文化の系譜

    布布の記憶:季節と祈りを纏う、日本の布文化の系譜 序章:布布という言葉が生まれた日 布布(ふふ)——それは、まだ誰も知らない言葉。 祖母の着物に触れたとき、風呂敷を広げたとき、産着に包まれたとき。布は、ただの素材ではなく、記憶を包む器だった。 WABISUKEが紡ぐ「布布」という言葉は、布...